学生寮
自分の席に戻った裕子は、空になったタカさんのグラスに気づき、ビールを注いであげていた。

こういうところ、裕子は本当によく気がつく。


それを見たカンジさんが

「お、女子高生のお酌、いいなあ」

とうらやましそうに言うので、私もビール瓶を持った。


しかし、

「じゃあ、莉絵がついであげますねぇ」

と、リョウさんの前にあったビール瓶を持ち上げた莉絵ちゃんに先を越されてしまった。


カンジさんは「サンキュー」と、喜んでグラスを差し出した。


それなら私はリョウさんにと、ビール瓶を持ったまま、莉絵ちゃんが注ぎ終わるのを待つことにした。


が、莉絵ちゃんはカンジさんのグラスがいっぱいになると、

「リョウ兄ちゃんも、どうぞぉ」

と、リョウさんのグラスにも注いだ。


私は宙に浮いたビール瓶をテーブルに置くしかなかった。

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