学生寮
リョウさんに見とれていたせいだけではないんだろうけど、何度も滑りそうになる私。


何度目かに転びそうになったとき、勢いあまってリョウさんの胸に飛び込んでしまった。


「うひゃあっ、ごめんなさい!」


我ながら色気のない叫び声。


すぐに体勢を立て直し、リョウさんから離れようとしたけど、抱きとめてくれたリョウさんの腕がしっかりと私を抱え込んでいて離れられない。


戸惑ってリョウさんの顔を見上げた。

リョウさんの顔に笑みはなく、どこか切なそうな表情だった。


整った顔立ちを間近にして、目が離せなくなった。


長いまつげに覆われた少し細められた茶色い目、

きめの細かい肌、

薄めの唇。


その唇が開き、少しかすれた低い声が聞こえた。

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