学生寮
顔を上げると、一番手前にいた人が、笑顔で立ち上がった。


「俺、佐藤寛治(ｻﾄｳｶﾝｼﾞ)。
よろしくな！」


そう言って手を差し出してきた。


私は黒いウェーブヘアとよく日に焼けた肌が特徴的な佐藤さんの顔を見た。


握手？


戸惑っていると、強引に右手をつかまれてブンブンと上下に振られた。


あっけに取られていると、隣に座っていた人が、いつまでも私の手を振っている佐藤さんの手を引き離してくれた。


「カンジ、いい加減にしろ。
彼女、固まってるぞ。
俺は、高部慎一(ﾀｶﾍﾞｼﾝｲﾁ)。
タカ、って呼ばれてる。
よろしく」


タカさんは、シルバーフレームの眼鏡がよく似合う大人っぽい人。


私はタカさんに会釈を返した。

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