学生寮
両親がエレベーターに乗り込むのを確認してから、携帯でリョウさんに電話した。


《もしもし》


ふだん、電話でリョウさんと話す事はない。


初めて受話器越しに聞いたリョウさんの声は、低く甘くて、ドキドキした。


「あ、みのりです」


私は、両親が突然一時帰国したこと、両親と一緒にあさってまでホテルに泊まること、明日は母のショッピングに付き合わなければならなくて会えなくなったことを話した。


《そっか……》


「ごめんなさい」


《いや、謝らなくていいよ》


少し黙っていたリョウさんは、思いがけないことを言った。

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