学生寮
その時、誰かの足音が聞こえた。

顔を上げると、タカさんが食堂に入ってきたところだった。

タカさんは、自販機でコーヒーを買うと私達の方に来た。


「何してんだ?」

「試験前だから、苦手な数学を教えてもらっているの」

「ああ、リョウは国立大も受けたって言ってたっけ。
文学部なのに、数学教えられるなんてすげーな。
俺は私大の文系ばかりだったから、数学なんて聞くだけでぞっとするわ」


タカさんはそう言いながら、ブルッと震えるフリをした。


「しっかり教わって試験がんばれよ」


そう言うと、タカさんは私の耳元に顔を寄せて囁いた。


「ついでに、あんなコトやこんなコトも教えてもらったら?」


カーッと頭に血が上る。
きっと私はゆでダコ状態に違いない。

「もうっ、タカさん!」


立ち上がって怒った私を、リョウさんが驚いて見上げてた。


タカさんは、さっさと自分の部屋へ戻っていった。


なんでタカさんはすぐ私をからかうんだろ。
だいっきらい!

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