切ないほどに、とろける恋

奏斗くんは、やれやれとした表情で私を見た。
「お風呂に入らないと臭くなるよ。俺、臭いミヤとは一緒にいられない」

確かに、人間の私は全身毛づくろいをすることができないから、どんどん身体が汚くなっていく。


私は、すごく嫌だけどお風呂に入ることにした。

お風呂場に着くと、いつもみたいに奏斗くんがお風呂に入れてくれるのかと思って待ってると、
「これが頭を洗うやつで、これが身体を洗うやつ。ここをひねればお湯が出るよ。お風呂から出たら、このタオルで身体を拭いてね」
そう言って、お風呂場から出て行ってしまった。

「ねーねー。奏斗くんがいつもみたいに洗ってよー!」
とお風呂場の外にいるであろう奏斗くんに、大きな声でおねだりしたけど、

「人間のミヤは自分で身体を洗うの!」
大きな声で断られた。




お風呂は思っていた以上に気持ちよかった。
全身に長い毛がないせいか、お風呂から上がってタオルで身体を拭くと、まだぽかぽかしていた。

でも髪の毛からは水がポタポタ垂れてくる。
ドライヤーは憂鬱。

「ドライヤーは奏斗くんがしてくれるでしょ?」

「仕方ないなあ」

ドライヤーは嫌いだけど、奏斗くんが乾かしてくれるときの、優しい手つきは好きだった。
優しく撫でられているみたいな感覚で、髪の毛がふわふわと舞う。
気持ちよくて、このまま眠くなっちゃう。
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