切ないほどに、とろける恋
幸い、家に戻ってこれたからよかったものの、事故に遭っていたら…
考えただけで目眩がした。
家に帰ってミヤに、いかに心配したか話しても、ミヤは聞いている様子がない。
時々、ミヤにはそういうところがあった。
これまで通じ合っていたことが嘘だったかのように、話しかけても分かっていないような反応をする。
何だか寂しくなって、ふと、昔のことを考えた。
ミヤと初めて出会った日のこと。
大雨の寒い日だった。
下校途中、草むらの方から聞こえた弱々しい鳴き声。
最初は気のせいかと思ったけど、確かに猫の鳴き声だった。
草むらの中を進むと小さなダンボールがあって、その中に子猫が横たわっていた。
抱きかかえると体温が低く、今にも死んでしまいそうだった。
慌てて叔父さんに連絡すると、ミヤを病院に連れて行ってくれ、何とか一命をとりとめた。
このときほど、ホッとしたことはないかもしれない。
俺の住むアパートはペットを飼ってもいいルールになっている。
叔父さんの協力を得ながら、俺の家で飼うことになった。
ペットのお世話は大変だったけど、ミヤとの楽しい生活に、すっかり夢中になっていた。
あんなに弱々しかったミヤが、今は面影もないほど元気に過ごしている。