切ないほどに、とろける恋

どうして私が奏斗くんと恋人同士になれないのか――
それは私が猫だからだ。

私は奏斗くんに拾われて、奏斗くんの家で飼われている。
室内飼いだから、外には出られない。
だけどそれで満足。
だって奏斗くんのそばを離れたくないから。
奏斗くんが学校に行っている間は寂しいから、学校に付いて行きたくなることもある。
だけど、外で見たことない顔した奏斗くんを見るのは、怖いような寂しいような気がする。
だから、奏斗くんの匂いがするこの部屋で、奏斗くんの帰りを待っている方が安心。

奏斗くんは高校生で一人暮らしをしている。
お父さんとお母さんは遠いところに住んでいて、代わりに叔父さんが近所に住んでいる。
叔父さんは奏斗くんの様子を見に、よくこの家に遊びに来る。
叔父さんは明るくて楽しい人。
私とも遊んでくれるし、私が大好きなおやつをお土産に持ってきてくれる。




今日も叔父さんが遊びにきた。
私が大好きなおやつを持っている。

「この猫、本当、奏斗に懐いてんな。猫もいいけど、そろそろ彼女でも作れよ。楽しいぞー」

叔父さんが私におやつを与えながら言う。
私は思わず、叔父さんの手を噛んでしまった。

「いでっ!!」

奏斗くんに彼女ができたら、私もう立ち直れない。
多分この家を出て行く。
だって、このお家で奏斗くんが女の子とイチャイチャしてるところを想像しただけで泣いちゃいそう。
< 3 / 30 >

この作品をシェア

pagetop