切ないほどに、とろける恋
ある雪の日
朝になると、外には雪が積もっていた。
雪だるまが作れそうなくらいの大雪だ。
学校が休みになると思っていたらしい奏斗くんは、ギリギリまで寝ていたせいで、遅刻しそう。
「くそっ、なんで雪積もってんのに学校なんだよ…」
ただでさえ、寒がりな奏斗くんだから、きっと大雪の日に外に出るのが嫌なのかな。
文句を言いながら朝の支度をする奏斗くんは、機嫌が悪い。
機嫌が悪いのに、私のご飯はしっかり用意してくれる。
寝ぼけた顔で学校に行く奏斗くんを見ていると、『猫でよかった〜』なんて思っていたけど、今日は奏斗くんが羨ましかった。
私は雪を触ったことも食べたこともない。
雪ってどんな感じなんだろう。
お家の中で見ている分には、柔らかくて美味しそう。
少しだけ、外に出たいという好奇心が働いた。
雪を触りたいとい気持ちと一緒に、これまで見たくないと思っていた、奏斗くんの学校での顔を見てみたいという気持ちも出てきた。
昨日の夜に、奏斗くんのことを考えていたからかな。
私の人生は短い。
奏斗くんの全てを知るには短すぎる人生だけど、高校生である今の奏斗くんを見られるチャンスは今だけ。
私は決めた。