君が死ねばハッピーエンド
「朔。来てくれてありがとう。上がって」

朔がパパにペコって頭を下げて、「お邪魔します」って言った。

「ゆっくりしていって。おじさん達も出掛けるから、何ももてなせなくてごめんね」

「パパ、いいからー。ほら、ママの支度も済んだんじゃない?」

ママが小さめの革のショルダーバッグを左肩に掛けてリビングから出てきた。

「お待たせ。そろそろ行きましょうか」

「そうだな。シイナ、今日はディナーも予約してるんだけど、大丈夫か?」

「うん。ママから聞いてるよ。私は適当にやっとくからゆっくりしてきてね」

私は元々送別会があるかもしれなかったから、ママ達にとっても今日が好都合だった。

でも事件のせいでそれが無くなったから、私は一人になった。

「二人で何か食べなさい」

パパが私にお金を持たせてくれた。
一万円札。高校生が二人で晩ご飯を食べるには、多すぎる。

「パパ、多すぎるよ」

「彼の前くらいは格好つけさせてくれよ」

パパがおどけるように笑って、朔が「ありがとうございます。いただきます」ってまた頭を下げた。

「パパ、行くわよ。遅れちゃう。朔くん、ごゆっくりね」

「はい。いってらっしゃい」

「いってきます」

パパと久しぶりのデート。
ママはすごく嬉しそうだ。
表情を見ていれば分かる。

私も、もしも朔と結婚することができたら、パパとママみたいに穏やかで尊敬し合える夫婦になりたい。

…なんて言ったら朔は、夢の見過ぎだって笑うかな。
< 102 / 156 >

この作品をシェア

pagetop