君が死ねばハッピーエンド
朔がなんでも無い話をいっぱいして、いつもと何も変わらない時間をくれた。

何時間も話をして、お腹が痛くなるほど笑った。

夕方の六時過ぎ、朔は帰った。

「晩ご飯食べに行かないの?」

「シイナは色々あって疲れてるだろ。明日も学校だし今日はゆっくり休んで」

「ありがとう。じゃあ今度は、今度こそパパに奢ってもらおうね」

私に笑い返して、朔は帰っていった。
パパに貰った一万円札は折り畳んで、パパがテーブルに置きっぱなしにしている小説の、しおりが挟んでいる場所に一緒に挟んだ。

小説の著者を、私は知らない。

あらすじを読んだらサスペンス物みたいだ。
この小説は、どうやって事件を解決しているんだろう。

私の結末も小説みたいにハッピーエンドに書き換えてくれないかな。

もしかしたらパパが読んでいる小説はバッドエンドかもしれない。

結末だけが知りたくてページをめくりかけていたけれど、そうなったら不安が強くなって怖いから、結末は見れなかった。

夜、ベッドの中でちーちゃんとメッセージを送りあった。

“大丈夫?”の後ろには続きがあって、SNSを見たこと、書かれてる内容から、ちーちゃんはやっぱり狙われたのが私だって気づいていた。

“店長と警察の人と少し話してすぐ帰ったよ”

“警察!?”

“うん。お店も被害受けてるしね。カメラにも映ってたし“

”知ってる人だった!?“

”ううん。変装してたし、正直性別もあんまり…“

”そっか。とにかくこれから気をつけなね“

”ありがとう”

スマホを充電器に繋いで、ベッドのヘッドボードに置いた。

明日は学校に行かなきゃいけない。
朝は朔が居るし、昼間はちーちゃんと一緒に居るから大丈夫。

放課後はバイトもしばらく休みだし、一人で行動しないようにしよう。
私物の管理にも気をつけなきゃ…。

色んなことを考えていると目が冴えてしまって、なかなか寝付けなかったけれど、それでも気づけば生理現象には勝てないのか、寝落ちからの朝を迎えて、いつもと同じようにスマホのアラームを必死で消すところから始まった。

スヌーズ機能が何回作動したのかは分からない。
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