君が死ねばハッピーエンド
翌週、バイト先のカフェが翌日から営業を再開すると店長から連絡が来た。

連絡を貰った日の午後、ママと挨拶に行った。

その時に出勤していた人達にしか謝罪もお礼も言えなかったけれど、パートさんや主婦さんに抱き締められて「辛かったね」って言われたことでまた涙腺が崩壊した。

「わたっ…私…辞めようと思ってっ…」

「辞めるってココを?何言ってんの」

「こんなに迷惑かけて…どんな顔して皆さんに会えばいいんですか」

「シイナちゃんは悪くない!悪い奴に負けちゃダメ!迷惑かけたと思うなら…」

「働いて恩返ししてもらわなきゃなぁ?」

パートさんの言葉を奪って、店長がニッと笑った。

事務所で泣き続ける私を、休憩に入ってきたスタッフ達が変わるがわる慰めていく。

私にもまだ残っていた居場所。
こんなに大切な場所までは奪わせない。

「でも学校も三学期に入るまで休むんです」

「だったらその時にバイトも復帰できる?とにかくシイナちゃんは休まなきゃ」

「本当にありがとうございます」

「店長さん、今回かかった修繕費用や休業中の負債を弁済させてください」

「お母さん、何をおっしゃるんですか。わたくしどもはシイナちゃんにも、そのご家族にも何かを償って欲しいなんて微塵も思っていません。本部も同じ考えです。なぜ苦しんだ人達から搾取するんですか」

「しかし…娘にも、娘が置かれている現状を把握していなかったわたくし達親にもまったく責任が無いとは言えません」

「だったらお母さん、私は先ほど娘さんにはその気持ちは一緒に働いて、返して欲しいと言いました。ご両親は娘さんを目一杯愛して、信じてあげてください。最後まで、必ず。娘さんの傷を本当に癒せるのはあなた達です」

「店長さん…」

あぁ。私はこんなに素晴らしい人に出会えて、私を信じても何も得なんて無いかもしれないのにこんなにも愛情を与えてくれる。

ここのスタッフ達、店長に恩返しがしたい。
私ができることは全部。

ハンカチで目頭を押さえながら、ママが恥ずかしそうに微笑んだ。
< 127 / 156 >

この作品をシェア

pagetop