君が死ねばハッピーエンド
「いらっしゃいませー」

制服に着替えて事務所を出る時は、必ず客席に向かって声出しをする。

少し前はオーダーが無い時はお冷を配ったりしていたけれど、今はセルフになった。

だからカトラリーの整頓をしたり、
空いた皿を下げたり、細かい仕事を見つけては時間を潰す。

平日の夕方はあんまり忙しくない。
休日のランチタイムの忙しさは、同じ場所とは思えないくらいに、みんな死に物狂いでオーダーをさばいている。

「シイナちゃん、今日はラストまで?」

渚先輩。
一個上の男子で、バイトを始めてから知ったんだけど、学校も同じらしい。

三年生の中では人気があって、私達の学年にも憧れている人が沢山居るらしいけど、私はバイトをするまで渚先輩のことを知らなかった。

ちーちゃんには「ほんとに朔くんしか見えてないんだね」って驚かれた。

クラスの女子には一緒にバイトをしていることを羨ましがられる。

細かい気配りが上手で、優しい。
いつでもニコニコして、バイトを始めてから学校でも先輩に気づくようになると、確かにいつも輪の中心に居た。

「はい。先輩は?」

「俺もラストまでなんだ」

「じゃあみんなで帰れますね!」

「うん。でも良かったら家の前まで送るよ。夜は危ないし」

「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。店長と近いですから」
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