君が死ねばハッピーエンド
君が死ねばハッピーエンド
十二月二十四日。
今日は、二学期の終業式。
もちろん私は欠席したままで、冬休みを迎えることになった。

きっと友達たちは明日のクリスマスに浮き足立っているのだろう。

本当なら私もそうだった。
朔と二人で過ごそうか、ちーちゃんと過ごそうか、みんなで一緒にパーティーをしてもいいな、なんて本当は十二月に入った頃から考えていた。

現実は全然違う。
私は誰とも過ごせていない。

「気分だけは明るくいなさい」

ママが買ってきてくれた卓上サイズの小さいクリスマスツリーを眺めて、ぼんやりと叶わなかったクリスマスのことを想った。

終業式が終わった頃だろうか。
十二時を少し過ぎた時、メッセージの受信を知らせる通知音が鳴った。

送信者はちーちゃんだった。

「ちーちゃん…?」

最後に学校で話した日から、初めての連絡だった。
ドキドキしながらメッセージを開いた。

″明日会えない?″

その一文に目頭が熱くなる。

やっと…。やっとちーちゃんと話ができる。
クリスマスの日。
きっと私達は親友に戻れる。

″ちーちゃん、連絡ありがとう。話したいことがいっぱいあるよ″

″私もだよ。シイナが休んでる間、すごく考えたんだ″

″逃げるみたいに休学してごめんね。でもちーちゃんとずっとちゃんと話がしたかった″

″ううん。スルーしてたのはこっちだから。私こそごめん。シイナの気持ちを無視して。私は誰よりも味方でいなきゃいけなかったのに″

″ちーちゃん、明日ゆっくり話そう?また話せて本当に嬉しいよ。明日、どこに行けばいい?″

″神社で待ち合わせない?いつもシイナと朔が待ち合わせてたとこ。昼の一時くらいに″

″分かった!″

スマホを置いて、ママが淹れてくれたアップルティーを飲む。
ママは電話をしていたみたいだ。

ちょうど終わったのか、私を振り返って笑っている。

「なんかいいことあったの?」

「ん?なんで?」

「急にクリスマスの鼻歌なんて歌い出して」

「明日ちーちゃんに会うの」

「そう。良かったわね」

「電話、なんだったの?」

「学校から」

「学校?」

「二学期の成績表は三学期の始業式に渡しますって」

「げー。要らないのに」

「冬休み、ちゃんと自習するのよ」

「はーい」

私の返事はいつもより軽かった。
三学期からはまた普通に学校に通えるかもしれない。

ちーちゃんは心の支えだ。
それはずっと変わらない。
でも私もいつまでもちーちゃんに寄りかかっているだけの人間にはなりたくない。

明日はちゃんと話そう。
自分の本音も、これから闘っていきたいことも。

私の日常を自分の手で取り戻したいって。
その為にはちーちゃんと朔の存在が必要なんだって。

その日の夜、ママが用意してくれたクリスマスイヴのご馳走もケーキも本当に美味しくて、
パパが幸せそうにお酒を飲んで、ママが「いい加減にしなさいよ!」って叱っている光景が、本当に幸せだった。

少しずつ戻れている。
私の、当たり前だと思っていた日常に。

どんなに願っても平穏はずっとは続かなくて、与えられている日常が当たり前じゃないってことを私は思い知った。
だからこそ、私は二度と失くしたりしない。
< 131 / 156 >

この作品をシェア

pagetop