君が死ねばハッピーエンド
「ちーちゃん、この道じゃ遠回りじゃない?」

神社からちーちゃんちへの道順はよく知っている。
今歩いている道では遠回りだ。

「久しぶりにシイナと一緒だからさ。寄り道とかしたくなっちゃって」

「あー確かに。よく冒険ごっことかしたよね」

「でしょ」

知っている街を、なんの発見も無いのに、中学生だった私達は闇雲に歩き続けていた。
案の定、目新しいことなんて滅多に無かったけれどちーちゃんと喋っているだけで楽しくて、日が暮れるまで喋り続けた。

よくある濃いグレーの瓦屋根。
知らない家の前でちーちゃんは立ち止まった。

「立派な家だね」

冒険をしていたあの頃を思い出す。
私はこの家を見たことが無い気がする。
自分の家から、そう遠くない場所なのに。

「ね、ちーちゃん」

ちーちゃんを振り返る。

ちーちゃんの腕が伸びてくる速度が酷くゆっくりに見えた。
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