君が死ねばハッピーエンド

目覚めると、″どこかの部屋″はオレンジ色だった。
窓の外の、驚くほど綺麗な夕焼けのせいだってすぐに分かった。

夕焼けが眩しすぎて、霞む視界で私の前に立っている人を見上げた。

逆光で表情はよく分からなかった。

頭の左上のほうがズキズキと痛む。
外的な物じゃ無くて、内側が痛む感覚だった。

「シイナ、メリークリスマス」

ゆっくりと首を動かして部屋を見渡した。
なんの変哲も無い、よくある誰かの一人部屋。

カーテンや寝具の色から、男性の部屋かなって思った。

空が本当に綺麗なオレンジ色だ。

「今…何時…」

「シイナってば寝すぎだよ。もうすぐ五時になるよ」

クスクスと笑いながら、まだ体を起こせていない私の前にしゃがみ込んで、頬に触れられる。
指先が冷たい。

「ごめんね。バタバタしててプレゼント用意してないんだ。でもきっと最高のクリスマスになるよ」

「なんで…こんなことするの…?」

「好きだからだよ」

「え?」

「朔が好きだから、こんなことしてるんだよ。おかしいかな?」

ふふって静かに笑いながら、ちーちゃんは言った。
何かに酔いしれるような表情をしている。
こんなちーちゃん、知らない…。

「朔が好き…?朔が…。おかしいよ!好きなら普通こんなことしない!好きな人を傷つけて脅かすようなことしないよ!」

「じゃあ、普通じゃないのかもしれないね」

悲しそうな声。
よく見えない表情のせいで、声だけが悲しそうに私に振り注ぐ。

私だって悲しかった。

悲しかった。

もう、戻れないんだ。

ちーちゃんが言っていることも、していることの何もかもが理解できなかった。

ズキズキと痛む頭を押さえて、私は体を起き上がらせた。
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