君が死ねばハッピーエンド
「ネットって…まさか…」

「まさか…ってことはー、アハッアハハハハハ!朔もヤッた?」

「…知ってるの?」

「朔は何をヤッたの?クスリ?」

「盗聴器…」

「わーお。でも朔のことだからどうせ死ぬほど後悔してんでしょ。私が教えてあげたの。“彼女を束縛するのに協力してくれる人が居るよ”って」

「朔はもうヤッてない!」

「ふーん。どうでもいいけど」

「ねぇ、さっきから全然分かんないよ…。ちーちゃんは朔のなんなの…なんか変だよ…」

「朔の大切な彼女のぉー、たーいせつな親友ー」

歌うように言いながら、私の髪の毛を掴んで思いっきり引いて、押した。
その拍子に私は床に膝をついた。

フローリングにラグは敷いてあるけれど、大した緩衝材にはなってくれなかった。

「って、言うとでも思った?」

「ちーちゃ…」

「きょうだいなの」

「キョウダイ…?」

「双子なの。朔と私は」

「何言ってるの…」

「ほんとだよ」

ちーちゃんが薬が入っていたのとは反対側のポケットからハサミを取り出した。
グリップのところで揺れているうさぎのキーホルダー。
あの時のハサミだ。

グッと力を入れて、ちーちゃんは左腕の上でハサミを引いた。

細い切り口からポタポタと真っ赤な血液が流れていく。

「おんなじ血が流れてるんだぁ。私と朔には。あんまり似てないから気づかなかったでしょ?二卵性なの」

「だって…家は…?名字だって違うし、あんな他人のふりなんて」

「うち、母子家庭じゃん」

ハッとした。
そう言えば、朔は父子家庭で、一人っ子だ。

「あのね、お母さんとお父さん、私のせいで離婚しちゃったの。私と朔はまだ小学校六年生だった」

当時を思い出すように、ちーちゃんの声が幼くなる。
完全にその頃に意識がタイムリープしてしまったみたいでゾッとした。
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