君が死ねばハッピーエンド
「幼稚園に通ってたくらいの時かなぁ。物心ついた時から朔に対して“お兄ちゃん”って感覚は無かった。周りのお友達のきょうだいの話を聞いてもピンと来なかった」

「本能ってこと?」

「そうかもね。小学校三、四年生くらいから少女漫画とか読み出してさ。キラキラしたラブストーリーの中に入り込んで、その時のヒーローはいつも朔だった。漫画みたいな恋がしたい。大人みたいなキスだって。それは全部、朔とがいい」

「朔には…言ったの?」

「言ったよ。悪いことだなんて思わなかった。大好きで仕方なかった。でも朔は“父さん達には絶対に言うな″って。五年生になってたかな?”なんで?“って駄々をこねたらさ、”普通はきょうだいでそんなこと思わない。俺は千種をそんな風には思えない“って。悲しかったけど、でも結局は朔がどれだけ学校で人気者でも、恋をしてる女子がいっぱい居ても、おうちに帰れば朔は私だけの物だって。私の中には朔と同じ血が流れてる。誰にも負けないって優越感のほうが強かった」

「いつまでそんな生活が続いたの?」

「六年生」

ちーちゃんが流れる自分の血をぺろっと舐めた。
口先から覗いた舌が、血と同じくらい真っ赤に見えた。
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