君が死ねばハッピーエンド
「ちーちゃんがもうこの世に居なければいいの…?」

「シイナちゃん?」

「ね、朔…先輩もそう思うでしょ?ちーちゃんが居なければ私達の日常は戻ってくるんだよね?」

「シイナ、間違ってるよ。逆だって。あんたさえ居なければ…」

「ちーちゃんが死ねばハッピーエンドだよ…。ねぇ、そうなんでしょ!?だってそうじゃん!特別なことなんて起こらなくていい。普通の…平凡な毎日の中でも今までとおんなじようにみんなと居られたらずっとずっと世界一幸せだって思ってた…」

「何甘いこと言ってんの。結局シイナは人に頼りっぱなしで生きてんでしょ。欲しい物だけ運良く手に入れてきただけのくせに!」

「そうだよ…。だからもう私だって誰かを救える強い人になりたくて、元に戻れたら今が当たり前じゃないって忘れないでいようって。もっと周りを大切にしようって思ってた。でも…ちーちゃんがこの世に居る限り…私はずっとずっとあなたの影に怯えて生きていかなくちゃいけない。どれだけもがいて自分の居場所を守ってもまたちーちゃんに壊されちゃうならそんなの嫌だよ。怖いよ…だから…」

ちーちゃんが見下すように立ったままで私を見ている。
その視線に体中を貫かれるみたいに心が痛い。
大好きだった親友。本当に大切だった。
でも、あなたはずっと違ったんだね。

「だから、ねぇ…ちーちゃん…死んで?」

「…は?」

ハサミを掴む。
うさぎのキーホルダーが揺れる。

このハサミは右利き用だ。
左利きの私にはグリップは持ちにくいのだろう。
でもそんなこと、今はどうだって良かった。

グリップは掴まない。

刃を開いて縦に、突き刺せばいいんだから!

片方の刃が私の手の平にも食い込む。
痛みなんか感じなかった。
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