君が死ねばハッピーエンド
「シイナを信じたからだよ」

「私を信じたから?」

「俺は渚先輩への嫉妬心からシイナに八つ当たりした。酷いことを言った」

「そんなことない。朔に対して不誠実だった私が悪いんだよ」

「結果的に俺はシイナを守れなかったのに、シイナは先輩のことばかりを信じてって言うことが…嫌で堪らなかった。でもシイナは懇願してた。だったら逆になんで自分のことはいつも後回しにして我慢してたくせに、他の奴のことばっかり懇願するんだよって考えたんだ。本当にただ純粋に、信じて欲しかっただけなんじゃないかなって思った。俺は渚先輩のことなんて少しも知らない。でも一緒に過ごしてきたシイナが先輩はそんな人じゃないってあんなにも訴えるのなら、それが真実なら、本当の犯人を野放しにしたまま俺達はとんでもないことをしてるんじゃないかって。だから俺は、シイナを信じようって思った。千種のこともあったし…それも引っかかってはいたんだ」

「朔。ありがとう。信じてくれて。私ね、ちゃんと朔と普通に会えるようになったら、今度こそ対等な恋人になりたい。もう朔が言っても無いことで勝手に自分を卑下してメソメソしない。朔の彼女は私なんだって胸を張れる人間になりたい。だからこの事件から逃げずに闘うよ。朔、まだ私と恋人で居てくれますか?」

「シイナ、本当に俺でいいの?こんなにもシイナの人生をめちゃくちゃにしたのに」

「朔はいつだって私を守ろうとしてくれてた。私がもっと早く負い目なんて捨てて朔に頼っていればこんなことにはならなかったんじゃないかな。ちーちゃんとのことは本当にびっくりしたけど…それも含めてこれから先、一緒に解決していきたい。朔と一緒に生きていきたい」

「ありがとうシイナ。この傷を悲しい物にはさせない。シイナも悲しまないで。この傷を見るたびに、俺はシイナとの絆を感じられるから」

「それはまだちょっと難しいかもな」

苦笑いする私に、鎖骨の下を撫でながら朔も笑った。

「シイナに触れたい。もうしばらく会えなくなるけど、シイナの温度を憶えておきたいんだ」

「うん」

朔のベッドに近づいた。
こんなに朔の近くに立ったのは事件の日以来だった。

私が伸ばした腕を引いて、朔は私の耳元で言った。
甘い、大好きな朔の声。

「愛してるよ。世界で一番」
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