君が死ねばハッピーエンド
「みんなさ、とにかく作業を進めなきゃって思いで黙々とやってるけど」

「うん」

声をひそめるちーちゃんに集中しながらも、作業をする手も止めない。

今日は私を含めて二人しか残れなかった。
そのもう一人はジュースを買いに行っている。

他にも生徒は残っているけれど、ほとんどの人はセッティングをしに、空き教室に行っている。

「やっぱりずっと考えてるよね。犯人は誰なんだろうって」

「…うん」

お昼前、一度教室に顔を出した担任も“事件”を知ってうろたえた。

すぐに校長に知らせると言った担任を、朔が止めた。

今、大事なことは事態を元に戻すことだと。
校長が知ることで、犯人をますます刺激するかもしれないって言った朔に、担任は渋々頷いた。

「犯人が誰であっても、理由がなんであっても、文化祭は絶対に予定通りやり遂げる」

「もっと酷いことされるかも」

「それでも…犯人がガッカリするくらい、楽しく、みんなが笑顔で文化祭を終わらせたい」

「シイナは強いね。朔くんが悲しむから?」

「私だって怖いよ。次は朔自身に危害を加えてくるかもしれない。でもせめて、私が強がってなきゃ…朔だって不安なんだから」

「いい子だね」

ちーちゃんが私の頭を撫でる。

作業している自分の手が震えていた。
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