君が死ねばハッピーエンド
その日の十二時過ぎ。
お腹が空いて、コンビニにお昼ご飯を買いに行った。

もし、今日私が海に行くことを知っている人にバッタリ会ってしまったら、体調が悪かった、でも空腹には抗えないとかなんとか言って誤魔化そう。

本当の理由なんて知られてはいけない。
絶対に。

一心にそう願いながら、コンビニに入った私がバッタリと出くわしたのは、雑誌コーナーでパラパラと旅の情報ブックを捲っている朔だった。

「え」

二人の声が綺麗にハモった。

持っていた雑誌をスローモーションみたいにゆっくりと棚に戻した朔は、「平気?」って私に聞いた。

「え…、えっと、うん。ごめんね。でももうだいぶ良くなって、お腹空いちゃったから…」

「そっか。そうなんだ、それなら良かった」

頭を掻きながら斜め下、私の靴の先らへんに視線を落とす朔は少し気まずそうだった。

「朔くんは?」

「え?」

「海、みんなと行ったんじゃなかったの?」

「あー…うん。ちょっとな。俺も調子悪かったって言うか…」

「大丈夫なの?」

「うん。平気」

「…」

「…」

「あのさっ…!」

また二人の声がハモった。

「朔くんから言って」

「いや、いいよ。どうぞ」

「いやいや…」

「…」

「アイス食べない!?」

三回目。

“二度あることは三度ある”

こんなくだらないことでも、現実になると慣用句を作った人は凄いなって思ってしまう。

三度目のハモりはさすがにおかしくて、二人で笑った。
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