君が死ねばハッピーエンド
「こういうことをされる心当たりは?例えば、ほら…」

三十代半ばくらいの男性警察官は言いにくそうに咳払いをした。

「ストーカー被害、とか。どうかな?」

「…ありません」

「そう。じゃあこの人かもなって心当たりも無い?」

「はい」

「防犯カメラの映像は君も観たのかな?誰かに似てるなぁって思わなかった?」

「全然…。顔も隠れてるし、ピンときませんでした」

「ここでアルバイトしてることを知ってる人物は?」

「両親と彼氏、親友…でもクラスメイトならほとんどの人が知ってると思います。同級生が来てくれることもよくあるので」

「…分かりました。こっちでも警備、巡回を定期的にするから、何か情報があったら教えてね。辛いと思うけど、君に対する嫌がらせだということには変わりないから、身辺によく注意して。あまり一人では行動しないようにしてください」

「はい。ありがとうございます」

必要最低限のことだけを聞かれるだけで、事情聴取は淡々と終わった。

私は被害者だけど、何故か叱られるんじゃないかって思った。

加害者の濡れ衣を着せられたあの時みたいに…。

でも今回はそうならなくてホッとした。
全然、ホッとできるような状況じゃ無いのに。
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