君が死ねばハッピーエンド
「シイナちゃん、お疲れ様。今日は店も開けられないし、もう帰って大丈夫だよ。残念だけど送別会も延期だね」

「ごめんなさい…。私のせいで」

「シイナちゃんのせいじゃ無いから。こんなことした奴のせいだよ」

「でも原因を作ったのは私なんですよね…」

「シイナちゃん」

店長がもう一脚のチェアに座って、私と向かい合った。

「誰もこんなことになるように仕向けてやろうなんて思って人と付き合ってるわけじゃないでしょ」

「でも…もし何かサインがあったのなら防げたかもしれない。気づかなかったからこんなことになっちゃった」

「シイナちゃんが誰かを傷つけてやろうと思ってした行動なら省みなきゃいけないね?でもそうじゃないでしょ?そんなことできるような人じゃないじゃない、あなたは。悪いのは犯人!だから自分が悪いって思わない!」

「すみません…本当にこの前からずっと迷惑かけっぱなしで…。あの…」

「ん?」

「お店…いつまで閉めるんですか?入り口があんなんじゃすぐには営業再開出来ないですよね…」

「ああ、ガラスのことなら気にしないで。本部への連絡も済んでるし、それにガラスの交換くらいなら一般家庭よりは大掛かりだけど、そんなに時間かかんないから。保険も入ってるし、シイナちゃんが気にすることじゃないよ」

「なんであんな割り方したんですかね」

「まぁ、脅し程度、ってとこだろうね。“危害を加えるかもしれないよ”って、威嚇みたいなもんでしょ。警察にパトロールは続けてもらうし、帰りはきちんと送るからさ。来る時も一人は控えたほうがいいね」

「でも…やっぱり私…」

「辞める、とか言わないよね?」

店長が私の目を真っ直ぐに見た。
正直言うと、ここで続けていくことが正解か分からなかった。

迷惑をかけた“事”が大きすぎるし、人の目だって気になる。
それに今日よりもっと酷いことをされるかもしれない。
これ以上お店に迷惑をかけてしまうかもしれないことが怖かった。
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