君が死ねばハッピーエンド
「今日のこと、申し訳ないなってシイナちゃんが思うのなら続けるべきだよ」

「え?」

「私はシイナちゃんが悪いなんて思ってない。でもシイナちゃんがそう思うのなら、それこそバイトを続けてお店に貢献してよ」

店長がニッと歯を見せて笑った。
悪戯な表情だ。

「なんでそんなに優しいんですか」

「何が?」

「普通なら厄介ごとには巻き込まれたくないじゃないですか。個人でだってそんなことなるべく避けたいのに、店長はお店を任されてるし他のスタッフさん達のことだってあるし…」

「でもシイナちゃんもその仲間の一人でしょ」

「え…?」

「私もここで働いてる人達も、言っちゃえば仕事関係以外の何者でも無いのかもね。でもさ、困ってる人を、今、悲しんでる人を見捨てるような薄情者はここには居ないって私は信じてる。そりゃあさ、巻き込まれるのは誰だって怖いし、自衛することは何も悪くない。むしろそうするべきだとも思うし。でも自衛しながらでも誰かを守れることはあるじゃん」

「私は…誰かを危険に晒してまで自分が好きなことばっかりを選ぶ勇気なんて無いです…」

「難しいね」

「はい…」

「私達は仲間としてシイナちゃんを守りたい。でもここを離れることがシイナちゃんの身を守ることになるのかもしれない。でもさ、もしシイナちゃんを脅かしてるこの一連の騒動が、この場所は関係なくて、脅しの一つとして使われただけなら、それこそ守らせてよ。あなたのこと」

「店長…」

「よし!決まり!まぁ、とにかく今日はもう帰って。また次のことが決まったら連絡するから」

「はい。本当にすみませんでした」

私がチェアから腰を上げて立ち上がると、店長はまた本部に電話をかけ始めた。

この事件のせいで、今日シフトに入っていた人は全員リスケになってしまったし、社員さんやメインで入っているパートさん、主婦さんのお仕事を私は奪ってしまったんだ。

なんで…なんでこんなことばかりが続くのか分からなかった。
文化祭の棺が壊された時からそう。

朔のファンの子が犯人だって思っていた。
でも次に狙われたのはちーちゃんで、今回は私。

ちーちゃんの時から、冤罪や罪悪感で追い詰められているのはいつも私。

これは好意なんかじゃない。
たぶん、悪意が私に向けられているって思った。

ストーカーなんてもっと考えにくいし…。

でも悪意を向けられる理由だって見当がつかない。
私が何をしたんだろう。

ここまで嫌がらせをされる理由。
今回のことは″嫌がらせ″の域を超えている気もするし。

気づかないうちに、何の気無しに誰かを酷く傷つけていたのかもしれないと思うと、理由も分らないのに罪悪感で吐き気がした。
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