ミル*キス
彼女の肩
地元の駅について自宅へ向かう途中、住宅街の中を通った。


ちょうど夕飯時だからか、あちこちの家から家族の笑い声なんかが聞こえてくる。

一家団欒ってヤツ?

その声に混じって耳に届いてきたのは、日曜の夕方にやっているテレビアニメの主題歌だった。


無意識のうちに顔をしかめていたと思う。


ガキん頃から日曜のこの時間帯が苦手だった。


人気のホームコメディ。

お父さんやお母さんはもちろんのこと、おじいちゃんやおばあちゃんまで揃っている。

そんな家族が過ごす日常。


みんなでちゃぶ台囲んで、夕食を食ったりして……

その日にあった出来事なんかを話して、誰かが突っ込み入れたりして……

そしてまたみんなで笑うんだ。


そんな風景を見せつけられるのが苦痛だった。


なんか直視できないっていうか……。

なんとも言えない、たまらない気分になってくるんだ。



まるで、

「正しい家族の形はこういうものなんだ」

「お前の家は違うのか?」

って言われてるような気がして。


ダルい。

体がダルい。


はぁ……と大きなため息をつくと、体の向きを反転させる。


来た道を戻って、また駅に向かう。


高架をくぐって、駅の反対側へ行く。

なぜか足が向いた先は……


ラファロだった。


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