ミル*キス
あの……クソババァ!


怒りにまかせて携帯を手にすると、メモリの中から母の番号を探す。


《……もしもし……?》


いかにも今起きましたって感じのかすれた声が聞こえてきた。

昨夜(というか今朝)母は帰ってこなかった。


オレが高校生の時は、どんなに遅くなってもとりあえず家には帰ってきて、オレが学校に行く前に一度は顔を合わせていたんだけど。

最近では、こんな風にたびたび外泊してる。


そして母はこういう時には必ずメールをよこす。

【今夜は帰らない】と。


子供がいるとはいえ、独身だし。

恋人がいてもおかしくない。

オレだって好き勝手してる。


だからそんなことわざわざ知らせなくてもいいって思うんだけど、こういうとこ、妙に律儀なんだ。



オレは電話の向こうの母に声を荒げた。


「おい、どうなってんねん! フジさんの代わり……とか言って、女の子が来てんねんけど」


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