ミル*キス
「その頃、あたし東京の新聞社にいてさ」

「えっ。8年て……」


目を丸くして驚くオレ。


「ルウさんていくつなんすか?」

「35」

「マジっすか? もっと若く見えますね。オレてっきり30いってるか……ひょっとしたら20代後半ぐらいかなぁ……とか思ってた」

「あはは。ありがと」


ルウさんは満足そうに笑ってからまた話の続きをしてくれた。


「その頃、社の先輩とつきあっててね。このまま結婚するのかなぁ……みたいなこと漠然と考えてたけど。親が倒れてさぁ。面倒みなきゃいけなくなって、結局、こっちに帰ってきてん。
しばらくは遠恋してたけど……やっぱり距離が離れるとあかんね。自然消滅」


「そうだったんですか」


「うん。まぁ……こういうことってホント、タイミングなんよね。
自分の力ではどうにもならないこともあるっていうか。
どんなに好きでもね、結ばれないってことはあると思う。
結局、あの人とは縁がなかったってことなんかな」



「後悔……みたいなの、ないですか?」


他人の話なのに、ミーコが泣きそうな顔で尋ねる。

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