ミル*キス
「あるよ。あるある。あの時ああすれば良かったのかなぁ……とか色々ね。今でも思うことはある。
でももしも時間を元に戻せたとしても、結局自分は同じことを繰り返すと思う」


「そうですね……」


ふいにスミレさんが口を挟んだ。


「もしもあの時ああしていれば……って考えることありますよね。そんなこと今さら思ってもどうしようもないのに……。過去はやり直せないのに」


その言葉にオレの胸はざわついた。

なんだろ……。

この嫉妬にも似た感情。

ひょっとして今スミレさんは過去の男に想いをはせているんだろうか……。


胸の中のもやもやを払拭したくて

とにかく話題を変えたくて

オレはわざと軽い口調で言った。


「それにしても、ルウさんてすごい人なんですね。新聞記者やったんですね」


「ま、ね」


ふふんと笑うルウさん。


「ちゃんと証拠もあるよ」



「証拠?」


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