ミル*キス
携帯のアドレスすら聞けないなんて、中学生以下だ。


――らしくない。

自分でもそう思う。

いつもならもっと上手くやれるはず。


必要以上にゆっくりとエプロンをたたみながら

頭をフル回転させて考える。


さて、どうでようか?

いつもはどうしてた?

どんな言葉で女の子を振り向かせていたっけ?


なにかきっかけが1つでもあれば……。


そう思っていた時、

スミレさんがターンテーブルからレコードを外した。


「あ……ビル・エヴァンス……」


何気なく呟いた言葉にスミレさんは反応した。


「これ、気に入ったの?」


じっとオレを見つめる。


「ええ……」

「そ。じゃ、持って帰る?」

「え?」
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