ミル*キス
オレは助手席に乗り込んだ。


「先に渡しておくね」


CDを差し出すスミレさん。

オレはそれを受け取って、家までの道を簡単に説明した。



車が動き出してからは、なぜか会話が見つからず、オレ達は終始無言だった。

雨をはじくワイパーの音だけがやけに耳につく。


途中、赤信号で停車中に、オレの携帯が鳴った。

メールの着信だ。

母からだった。


【今夜は帰らない】とのこと。


だから、そんなこといちいち連絡しなくていいのに……。


そう思いながら、返事を返すこともなくパチンと携帯を閉じた。

一瞬、こちらをチラリと見たスミレさん。

だけど、信号が青に変わり、また車を発進させた。



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