ミル*キス
湯気に乗って、コーヒーの香りが立ち昇る。


そして最後にブランデーを染み込ませた角砂糖をスプーンに乗せて添えた。


「どうぞ」


リビングのソファに座るスミレさんの前にカップを置いた。

ライターを取り出して、角砂糖に火をつける。

青い炎が上がる。


それが消えてから、コーヒーの中に角砂糖を入れた。


「何を入れたの? お酒?」


スミレさんは眉をしかめる。


「ブランデーですよ」

「カフェ・ロワイヤル?
もぉ。いつの間に、そんなの覚えたの……」なんて呆れ顔だ。


「っていうか、あたし車なんだけど?」

「これぐらいのアルコール大丈夫でしょう? それに……」

「それに?」

「もしも残ってたら、(体からアルコールが)抜けるまでここにいればいい」

「アナタってほんとサイテーね。いつもこんなやり方で、女の子を家に入れるの?」


フゥと大きくため息を吐いて。

それからオレの淹れたコーヒーを口にした。


「不味かったら、速攻帰ってやろうかと思ったけど……」


眉を寄せて、ちょっと顔をしかめる。


「……悔しいぐらい美味しい」

「でしょ?」


ニヤニヤ笑いながら言うオレに「調子乗りすぎ!」なんて突っ込みを入れながらも、スミレさんもふわりと笑った。


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