ミル*キス
じっとオレを見つめるスミレさん。

その瞳は戸惑いがちに揺れている。



「……そう…だっけ? 気にもしてなかった」

「ふーん」


オレは呟く。


「ひょっとして、ちょっとでもオレのこと、意識してくれてるんかな……なんて期待しててんけど」


「意識か……。どうかな。わかんない」

「わからない……ってことは……」


スッと体を近づけた。


「可能性アリってことですか?」


「だから、わからないって言ってるじゃない」


スミレさんの表情が崩れた。


「ねぇ。どうして……そんな風に見つめるの?」


不安そうな、今にも泣き出しそうな顔。


儚げで……

実体がなくて……

掴もうとしてもすり抜けてしまいそうな。


彼女の存在を確かめたくて

指を伸ばして、そっと、頬に触れた。



それから

ガキがするみたいな

ほんの一瞬触れるだけのキスをした。





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