ミル*キス
オレはジッパーを上げながら答える。


「そういう質問を家政婦がするのはどうかと思うけど。プライバシーには踏み込まんといてくれるかな」


だけど、ミーコは質問をやめない。


「……スミレさんと一緒だったんですか?」



振り返るとこちらを見ていた。


こちらを……というよりは、テーブルの上に置かれたビル・エヴァンスのCDケースをじっと見つめている。


別に隠すことでもない。


というか、この際だからミーコにははっきり言っておいた方がいいのかもしれない。

そう思ってオレは「ああ」と頷いた。



途端にミーコの顔が歪んだ。

しばらく黙っていたけど、CDを見つめたまま口を開いた。


「……スミレさんはやめた方がいいと思いますよ?」


「なんで?」


オレはシャツを手に取る。


「だって……」


一瞬口ごもるミーコ。

だけどパッと顔を上げた。


「だって、おかしいですよ」


「何がやねん」


「スミレさんの“歳”知ってます?」



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