ミル*キス
「じゃ、そろそろ行こうか? 予約時間、過ぎてるし」


男はエスコートするように、スミレさんの背中にスッと手を添えた。


スミレさんはコクンと頷くと、男に誘導されるように歩き出す。

最後にオレの方をチラリと振り返った。


「サヨナラ……」


そう言って。




オレの足は石みたいに固まって、一歩も動けなかった。


――なんだこれ?


こんな展開は予想もしていなかった。


ひょっとして、弄ばれたの? オレ?



やってくれるわ……



野原スミレ。

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