ミル*キス
「サトシ君!」



その場で呆然と立ちすくんでいると、誰かがオレを呼ぶ声がした。


巻き髪を揺らしながら笑顔で近づいてくる女。


「トモミさん……」


会うのは1週間ぶり。

彼女の部屋で最後までヤレなかったあの日以来だ……。



「あー。ひょっとして、あたしのこと待ってた? なんてね」


「ハハ……」


愛想笑いしながらも、オレは去っていくスミレさんと男の後姿をじっと見つめていた。


「なに? 桂木(カツラギ)さんと知り合いなの? サトシ君て」


「桂木って……あの男?」


オレは遠ざかっていく男を指差した。


「つーか、トモミさん、あの男知ってるん?」


「え? うん、まぁ、うちの社の有名人だからね」



――うちの社……。



言われて、思い出した。

トモミさんの勤める会社はオレの通う予備校から3つ隣のビルだ。


オレがトモミさんに逆ナンされたのも、この近くのダイニングバーだった。



そっか。


あの男とトモミさんは同じ会社に勤めているのか……。

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