ミル*キス
そしてその飲み会の席で、オレは桂木に関する情報を得ることができた。

というか、ちょっと話を振ったらみんないくらでも話してくれた。




フルネームは桂木誠一郎(セイイチロウ)。


日本中から頭のイイヤツが集まる某大学の、法学部卒。


他の企業を評価して吸収合併したり買収したりする事業部の重要なポストについているらしい。
(そんなことまでバラしちゃって良いんだろうかと気になったけど……)


絵に描いたようなエリート社員。


仕事もできて、将来有望。


スポーツマンで、人柄もルックスも悪くない。

当然、狙ってる女子社員は数知れず。



「へー……。なんか男として、完璧やんか」


ちょっとふてくされて、オレは酒の入ったグラスを口にした。



その後も、女達の口から漏れてくるのは、桂木に対する褒め言葉ばかりだった。


グラスの縁を指でなぞりながら、トモミさんは最後にこんなことを言っていた。


「桂木さんて、誰にもなびかないって噂されてたけど……あーんな、キレイな恋人がいたのかぁ……どうりでね。ふふ」


含むように笑うと、ちょっと意地悪っぽい目をしてチラリとオレを見る。


――恋人。

やっぱ桂木はスミレさんの恋人なのかな。



だとしたら、オレとのことは何だったんだよ?


火遊びみたいなもんだったのか?







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