ミル*キス
「再会したのは、本当に偶然だったの。
チアキ君の保育園がラファロのすぐそばだったから。びっくりしたわ。桂木さんと会うのはあたしが大阪にきて以来だったから、もう何年も会ってなかったのよ……。でも全然変わってなくて……」


スミレさんはその時のことを思い出したのか、クスリと笑った。


「色々事情を聞いているうちに、なんだか放っておけなくなって。時々ご飯を作ったりチアキ君の様子を見に行ったりしてたの。
チアキ君もあたしになついてくれて……。
今回の出張も桂木さんはあたしに迷惑をかけるわけにはいかない……って思って、チアキ君を東京のご両親の元に連れていくつもりだったみたいなんだけど。チアキ君の方からあたしと一緒にすごしたい……ってご指名があってね」


「それで3ヶ月間も面倒みてたんですか?」


「うん」


「で……今日は……」


と言いかけて口ごもってしまった。

これまでの経緯はともかく、今日の二人はまるでデートでもするかのように見えたから。



「今日は、そのお礼に……って食事に誘われたの。もちろんチアキ君も一緒によ」


お礼の食事。

チアキ君も一緒。


その言葉だけでなんだかホッとする。


だけど、そんなオレの心をかき乱すようなことをスミレさんは言った。




「その席で……プロポーズされたわ」


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