ミル*キス


【今日帰れないんだけど、台風、大丈夫? 今、家にいるの?】


母からだ。


ガキじゃねーんだから、こんなこといちいち連絡してこなくてもいいのに。


メールがスミレからでなかったことにがっかりしながら返信を打つ。



【家にいる。大丈夫やから】

とだけ。



寝汗をびっしょりとかいていた。


枕やTシャツが濡れてる。


「あー……水飲みてー……」


誰か持ってきてくれないかなぁ……なんて思うものの、この家にはオレしかいないわけで。


しょうがないから携帯を手にして立ち上がった。


寒気がするので、布団を体に巻きつけたまま、フラフラとした足取りでキッチンに向かった。


窓を叩く雨と風、それから雷の音が響く。

まさに台風直下って感じだ。



冷蔵庫をあけてミネラルウォーターを取り出した。


グラスを出すのも面倒だから、そのまま口にする。


――ゴクンッ

水が喉元を通りすぎた時、ふとカウンターの上に置かれているものに目がいった。

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