ミル*キス
停電は相変わらず続いたままだ。


オレは今目を開けているのかな?


ためしに閉じてみても、広がるのは暗闇ばかり……。


堕ちる……堕ちる……どこまでも。



何かにすがるように手を伸ばしてテーブルの上を探る。

指先が触れたものを握り締める。


携帯だ。


パカッと開くと、急に目の前だけが明るくなって、思わず目を細めた。


何かが見えるってすげー安心するんだな。


メモリからスミレの番号を表示させる。


なんかヘンな例えだけど、地獄に降ろされた蜘蛛の糸のようだ。

とても頼りないんだけど

この明かりだけが、オレを救ってくれる唯一のもののように見えた。

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