ミル*キス
ケンジはこの春から喫茶店でバイトを始めた。

といっても、当初からそれは3ヶ月間だけという契約だった。


どういう事情かは知らないが、それはオーナーの都合によるものらしい。

時間は月曜から土曜の夕方6時から閉店の10時まで。

そのバイトの期限はあと1週間。



「ほんま、頼むわ! あと1週間で終わりやねん。今さら新しいバイト募集するのも大変やろうし。オレ、昨日も行かれへんかったし……。ほんま迷惑かけたなぁ…って思ってるねん」


眉根を寄せて、本当に申し訳なさそうな顔をする。

きっとかなり責任を感じてるんだろう。

怪我をしてる自分の身よりも、バイト先のことを心配するなんて。

ほんまにコイツは……。



「わかった。1週間なら、別にかまへんよ」


「助かるわ。ありがとうな」


ケンジはそう言って、ホッとしたような笑顔を見せた。


それから喫茶店の場所を詳しく教えてくれた。


店の名前は初めて聞いたが、それはいつもオレ達が利用している駅のすぐ近くだった。

< 28 / 276 >

この作品をシェア

pagetop