ミル*キス
ちぃちゃんは高校生の時、ずっとシィに片思いしてた。

まさに一途。

そんな感じだった。


チャラチャラと軽い付き合いばかりしてたオレにはそんな彼女の姿は新鮮に見えたけど、

最初はその心境が全く理解できなかった。


でも、逆に知りたかったんだ。


報われないってわかってても、好きになってしまうその気持ちを。


そう思って彼女を観察してるうちに……

いつの間にかオレの中に、今まで味わったことがないような感情が芽生えてた。


なんか、上手く言えないけど。

“シィを一途に想う彼女”が好きだった。


シィを想うように、オレのことを考えてくれないだろうか。

あんな風に想われたら、オレのカラッポの心も満たされるんじゃないか

……なんてわけのわからない期待を抱いたりしてた。



恋ってヤツの定義はよくわからないけど。


オレはあの時、ちぃちゃんを求めていた。

誰にも執着しないオレが、初めて、本気で手に入れたいって思ってた。


やっぱオレはあの時、たしかに恋してたんだと思う。


うん。


あれは……


恋だった。


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