ミル*キス
「……サトシ?」


その声にハッとすると、いつの間にかオレの顔をケンジが覗き込んでいた。


「アイツら、元気そうやった?」


動揺を悟られまいと、できるだけ明るい声を出した。



「うん。相変わらずやで。めっちゃ仲良しやしな」


“めっちゃ仲良し”


その言葉にこめかみにピシっと青筋が立った。

お前は一言多いんだよ……と心の中でケンジに突っ込む。



「あ。今オレ地雷踏んだ? お前、ひょっとして、まだちぃちゃんのこと引きずってるん?」


なんて笑いをかみ殺したように言って、オレをからかうケンジ。


「……お前、足も折っとくか?」


できるだけ低い声でそう言って左足を抱え込むポーズを取ろうとしたら、

「うわっ。ギブギブ!」

と、ケンジはベッドを叩いた。


オレはメッセージを殴り書きしてペンをケンジに返した。


「じゃ、オレもう帰るし」


立ち上がると、「あ、そうそう!!」とケンジはちょっと焦ったような顔をしてこちらを見た。
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