ミル*キス
こういうのは“綺麗なお姉さん”って言うんじゃないかな。


なんて思いながらその人を見つめた。


髪は黒くて、すっきりとしたショートカット。

服装だって、シンプルな黒のカットソーにエプロン姿。


ほとんどメイクなんてしてなさそうなぐらいナチュラルなのに。

全てのパーツが完璧な形をして完璧な位置に備わっている。

いわゆる、美形ってヤツ。


憂いを含んだ瞳に見据えられて、オレは身動きできずにいた。


凛としている……

って、こういう人のことを言うんじゃないだろうか。


バカみたいにいつまでも突っ立っているオレに、彼女は口を開いた。



「いらっしゃいませ。あの……お好きなお席にどうぞ」


「あ。いえ……オレ、客じゃなくて。あの……ケンジから紹介されて来たんですけど」


「あっ……もしかして、工藤君?」


「はい」


「来てくれてありがとう。助かるわ。さっそく今日から入ってもらえるんだよね?」


彼女の問いかけに、オレはうなずいた。


「じゃ、お仕事のこと、説明するね。とりあえず……こっちに座って」


勧められるまま、カウンター席に腰掛けた。


説明を始める彼女の横顔を眺める。


その瞬間、オレはまた息を飲んだ。

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