ミル*キス
「……って、こんな感じなんだけど。どうかな?」


一通り、仕事内容を説明し終えたスミレさんはオレの顔を覗き込んだ。


ケンジから聞いていた通り、バイトは午後6時から10時までの4時間。


元々この店は彼女が一人でやっているらしい。

だけど、今はある事情からその時間は店を抜ける。

6時に店を出て、閉店作業をするために、10時にはまた戻ってくるのだとか。



「って、オレ、その間一人なんすか?」


「大丈夫よ。うちフードメニューないし」


メニューはスミレさん手作りのケーキやクッキー、それからドリンクのみだという説明はすでに聞いている。

だけど……。


「いや、コーヒーって……。素人が淹れられるもんなんすか? プロの味……みたいなもんもあるし。それに、オレ……豆の種類とかわからへんし」


コーヒーや紅茶って、淹れる人によって味がすごく変わる。

オレだってそれぐらいわかってる。


金もらってやるんだから、それなりの仕事をしなきゃまずいわけで……。


そんなオレの心配をよそに、スミレさんはあっけらかんと答えた。





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