ミル*キス
「甘いモンといえば、オレの友達にヘンなヤツがおるんですよ」


「ヘンなヤツ?」


「うん。レーズンが嫌いなクセに、『レーズンパンが好きや』……とか言いよるんですよ」


「ぶっ……何それ?」


「おかしいでしょ? ヤツいわく、レーズンの周りのちょっと甘くなったパン生地が美味いんやって。そのくせ、レーズンは食わへんし。レーズンだけほじって、よけるんっすよ? ほんまアイツありえへんわ……」


「あははっ」


ルウさんはお腹を抱えて笑い出したかと思ったら、ハッとした顔をした。

「ひらめいたっ! それいただき! レーズン嫌いやのにレーズンパンが好きな人が殺される話! ほじったレーズンでダイイングメッセージを残す……みたいな!!」


「ちょ。笑えるんすけど……。レーズンでダイイングメッセージて。どんだけ余裕あるんすか、殺されてるのに。それ、コメディっすか? 」


「何言ってんの! マジ、マジ! 大マジやから!!」


ルウさんは急にカタカタとパソコンに打ち込み始めた。


絶対コメディやな。


そう確信した瞬間、ドアベルの音が響いた。



「……あ」


ドアを開けて店に入ってきた男をオレは指差す。



「アイツですよ。レーズンパン」


その瞬間、店中が笑い声に包まれた。


わけがわからないといった感じでヤツは不思議そうにキョロキョロしていた。

相変わらずの天然男

シィ登場……。


ナイスタイミング。


くくっ。
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