ミル*キス
「サトシ、トイレどこ?」


「ああ、あっち」


オレは店の隅を指した。


「ん」


シィは、ポンポンとちぃちゃんの頭を叩いて、トイレへ行ってしまった。


ちぃちゃんはシィがいなくなった途端不安になったのか、落ち着かない様子であちこちをキョロキョロ見渡したり、水の入ったグラスを口につけたりしていた。


オレは彼女のためにオレンジペコを用意しながら、そんな様子をこっそり観察してた。


ちぃちゃんはミーコの隣の席に腰掛けていた。


こうして近くで見比べてみると、二人は全然違って見えた。


初めてミーコを見たとき、二人の印象がかぶってる……なんて思ったのが不思議なぐらいだ。


卒業式の頃、あご下ぐらいだったショートボブは、今は肩にかかるくらいまで伸びてる。

なんか高校生の頃よりもあか抜けて、可愛くなった気がする。


それはやっぱりシィと付き合ったことによるものなんだろう

……なんて思うと、ちょっとだけ悔しかったりもするけど。




「ちぃちゃん、なんか、可愛なったな」


彼女の目の前にカップを置くと、「えぇ?」と驚いたような声を上げた。


「そ、そうかな……変わってないと思うけど……」


彼女はほめられると、いつも困ったような顔をする。

どうリアクションすればいいか戸惑ってる感じ。


そんな風に恥ずかしそうにする姿が、オレは結構好きだったりするんだけど。

ちょっといじめてみたくもなる。


オレは顔をちぃちゃんに近づけて耳元で囁いた。






「もう、シィとはヤッた?」


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