ミル*キス
よっぽどヘンな苗字なのかな?

でも、そんな風に隠されると逆に興味が湧いてしまうだろ、普通。


「隠されたら余計に聞きたくなるんすけどぉ」


彼女の目の前まで近づくと、おどけたようにそう言って、ひょいと顔を覗き込んだ。


そんなオレを彼女は上目遣いで見つめる。



「笑わない?」


オレは「えーと……」と一瞬目を泳がせてから、「うん」と頷いた。


「ウソ。絶対笑う」


プイって目をそらすと、またモップを動かそうとするスミレさん。

オレはモップの先を握ってその動きを止めた。


「マジで! 笑わへんって」


「絶対?」


「約束します」


とうとう観念したのか、スミレさんはうつむいたまま、ポツリと自分の苗字を口にした。
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