ミル*キス
「……野原」



「ノハラ?」


野原…スミレ……。
野原スミレ。


その瞬間、オレの頭の中に浮かんだのは、

アルプスの少女みたいな服装でお花畑をスキップしてるスミレさんの図だった。


なんちゅう牧歌的な名前だ。


「……ぷっ」


やべっ。

吹き出してしまい、慌てて手で口を覆った。

スミレさんは、手にしていたモップで床を叩くと、ムッとした顔でオレを睨む。


「だから言いたくなかったの。こんな名前、あたしのキャラじゃないし。自分でも似合わないってわかってる」


「あはは」


たまらずオレは腹を抱えて笑い出した。



「ちょっと。笑いすぎだよ。全然約束守ってないし」



彼女のグーパンチがこちらに向かってくる。


オレはそれをひょいとよけて、まだ笑い続けていた。



「ごめんごめん。いやっ、そうじゃなくて……ぶっ。あはは……」


「何がそんなにおかしいのよ?」




「可愛いなぁ」


「は……?」

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