ミル*キス
なんてね。

んなわけナイナイ


なんて自分に冷静につっこみを入れつつ、

腰をかがめて、うつむき加減の彼女の顔を覗き込む。


目が合った瞬間、スミレさんの動きが止まった。



――あれ?


なんで黙ってるんだ?


スミレさんは唇をキュっと結んで、オレを見つめる。


その表情からは何も読み取れない。

でも、なんとなくだけど

警戒されて、ものすごい壁を作られてる気がする。


――なんて。

壁なんか作られたら、

壊してでもそっちに行きたくなるっつうのが男の本能でしょ。


「スミレさんてさぁ、彼氏いるの?」


「何? 急に……」


今度はスミレさんが戸惑う番だった。


迷惑そうに眉間にシワを寄せてる。


「その質問には答えなきゃダメなの?」



「じゃあ、質問を変えまーす。最後につきあったのっていつ?」


「ねぇ、なんなの?」


「答えて? いつ?」


「意味わかんない」と小さく呟いて

スミレさんは、ゆっくりと答えた。
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